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世界牡蠣研究家
山本紀久雄

オランダは既にみたように歴史上最初の「ヘゲモニー(覇権)国家」であり、豊かさを他国の嫉妬感情から戦争を挑まれ敗戦し衰微した。しかし、その後、三百年有余、変転するヨーロッパ政局の中で紆余曲折はあったが、オランダはイギリスとの友好協力関係を保ち、EU体制に帰属し、平和と繁栄を享受し、今や、豊かな国として世界の中で存在感を増している。日本はオランダを一つの鏡として学ぶ必要があるだろう。その意味も込めて、今回はオランダ牡蠣事情を紹介したい。

Oesterijウストレイ


オランダ南西部のゼーラント州(Zeeland、海の国の意)は、州都はミデルブルフ。そこから東方向の海岸イアーセーケに入った。イアーセーケでOesterijウストレイはすぐにわかった。牡蠣小屋というより、おしゃれな店舗という感じの道路わきに看板が出ている。

小屋に入ると26歳の経営者の息子Mr Jean Dhoogeが迎えてくれる。第一印象が爽やか。好感持てる。早速に説明を受けるが内容が的確だ。事前にアポイントをメールで連絡し合った際も、なかなか親切な対応であったとおりである。オランダのゼーラント州は貝類、甲殻類の養殖の長い歴史があり、その中でここは家族経営の企業として1905年の設立なので、100年以上の歴史を持っている。

牡蠣養殖場としての海域を15年前から80ha持っていたが、人の手配が整わず、今まで使用していなかったが、2年前から養殖を開始した。養殖海域は政府の管理下で場所が決められている。もう一つの背景は、2年半くらい前からムール貝の養殖できる量が減ってきたので、牡蠣に進出したということもある。また、ここ40年くらい牡蠣の養殖はあまり人気なかったが、5年前から牡蠣に人気がでてきたこともある。

この小屋をつくった目的は、訪れた人々が、当社の養殖や商品に関して情報を得やすいようにしたいためであり、また、様々な料理を提供するためでもある。今では観光ツアー客が年間3から4万人来るようになった。ホームページを見ると次のようにPRしている。「当社では大勢グループのビジターでもガイドいたします。友人、お客様接待、家族等のグループで訪問を歓迎します。ツアー+テイスティング+牡蠣やムラサキ貝のバスケットのお土産、というコンビネーションはいかがでしょうか。その他ご要望がありましたらお知らせ下さい。将来的には当社のシーフード料理のクッキングクラスを計画しています。

是非お電話かEメールでコンタクト、お待ちいたしております」

さて、ここが扱う牡蠣は三種類。

1. OSTREA EDULIS 平牡蠣 60gから200gの牡蠣 隣の離れたグレーデング湾で養殖している。
2. CRASSOSTEA GIGAS ギガス マガキ これは目の前の海で養殖
3. CRASSOSTEA GIGASのスペシャル 隣の離れた湾で養殖

生産量としてはムール貝が年間2000t、牡蠣は平牡蠣が40t、マガキが年間150t。因みに、平牡蠣のオランダでの全生産量は150tから200tである。牡蠣の輸出はベルギーとイタリア。それとスペシャルを香港へ。ブリッセルには出荷していない。他の業者がブリッセルに出しているので。当社は新しいところを探しているという。オランダでは輸出専門企業が5社、国内と輸出が10社。生産のみが15社ある。昔は300社あったが今は30社に減った。今後も10社から15社になるだろうと予測している。

養殖方法は海底を掃除し、ムール貝の殻を海底に敷いて稚貝をつける方式。ムール貝の殻は火を通して乾燥させたものを購入している。また、海底の場所は一年ごとに変える。6月中旬に排卵する。100%ナチュラル。
牡蠣を市場に出せるまでの生育にはスペシャルは2年、マガキは3年、平牡蠣は4年。出荷価格はスペシャル55セント、マガキは45セント。ロブスターも扱っている。店ではキロ当たり37ユーロ、出荷価格はキロ当たり25ユーロ。海の清潔基準は管轄官庁から厳しいチェックを受ける。

勿論海の水環境はAで、毎週海水チェック。出荷の浄水場チェックも毎週。牡蠣そのものを持ち込み毎週チェック。特にノロウィルスには厳しい。発生したらすべてストップだ。海底は20mから2mの深さ。輸出には政府の許可書が必要で、手続き費用として170ユーロ必要だ。コストがかかるので大変。このような説明を受け、次に小屋の向こう側にわたるが、その間にたくさんのは牡蠣が網に入れられ保管されている。それを見ながら渡りきると、そこはムール貝の養殖の歴史と現状を説明した展示ルームとなっている。訪れた人々への情報提供であり、奥には広いプレゼンルームもあるように、なかなか充実している。


再び小屋に戻って奥に入ると、そこは調理場である。調理してくれるのはペンさん。以前はレストラン経営者とのこと。途中で日本の調味料をいくつも見せてくれ、それを使って手際よく、次から次へと牡蠣料理が出来上がっていく。

そういえば、林芳正農林水産大臣が「パリのレストランでは日本の柚子が大人気で、調理の必需品になっている」と講演で話していた。自宅の庭にたくさん実をつけている柚子があるので、今度、パリに行くときはお土産にしようかと一瞬思う。ここはオランダなのに・・・。たが、牡蠣の味わいは生で確認しないとレベルが本当には分からない。

そこで、ペンさんが調理する前に、自慢の生牡蠣を食べてみる。美味い。オランダの味わいがする。とにかく子供の幸福度が世界一であるように、ここの海の牡蠣はストレスなしで養殖されているはずだ。だから豊かさがあるように感じる。

生牡蠣を食べ終わるのを待っていたかのように、牡蠣のオーブン焼き、蒸し焼き、天ぷらの三種類を目の前で調理してくれる。いずれも美味いが、食べ過ぎである。

とにかく、牡蠣でお腹がいっぱいになり、こちらのお腹幸福度は当然に満点となった。

Roem van Yerseke ルム・バン・イヤーセーケ

午後はすぐ近くの企業Roem van Yerseke ルム・バン・イヤーセーケを訪問した。規模が大きく、ここには四つの工場がある。

① ハッチリー Hatcheries
② 牡蠣の出荷
③ ムール貝の出荷
④ エビの出荷

マネージャーのGiovanni Verhaert氏が案内してくれる。活動的な営業マンというイメージ。ブランドはZeeland,s ROEM

1706年設立され、1942年から現在のファミリーが経営している老舗である。従業員250名。主な商品はムラサキ貝、牡蠣、クルマエビ等。また、消費者のニーズに合わせムラサキ貝パン、ムラサキ貝ソース、ママレード、日本の海藻サラダ(中華わかめ)、牡蠣のナイフ等の関連商品も販売している。なお、牡蠣の販売数量は1000万個といい、販売先はヨーロッパ全部と、香港、上海、北京、ロシア、ウクライナ、ドバイだという。この販売先を聞いてわかった。この企業は隠れたヨーロッパの牡蠣養殖大手であると。今まで各地で訪れた養殖企業の中で、多分、一番大手ではないかと感じる。ハッチリーの内部も写真に撮らせてくれる。

しかし、ヨーロッパ各地の牡蠣養殖場において、ここルム・バン・イヤーセーケの話を聞いたことはなかったし、オランダでこれほどの規模で牡蠣養殖とその他養殖が行われているとは、訪問するまでわからなかった。

これがオランダだと思う。国際的に派手さはないが、確実にビジネスを確保しているのだ。これはやはり、17世紀に繁栄したコツを身につけ、そこにかつてイギリスから嫉妬され戦争に引きずり込まれた経験から「あまり目立たないように」しながらも、経済的利益を享受するという経営スタイルをとっているのだと推察する。

また、1956年から1978年までアジア諸国から研修を受け入れたというのであるから、技術的にも高いレベルなのだろう。

その技術をルム・バン・イヤーセーケのパンフレットが次のように述べている。

1.品質及び食品の安全性

ルム・バン・イヤーセーケの品質管理部門は、全商品の品質をモニターしている優れた食品スペシャリストによるチームで成り立っている。全商品は注意深く多様な面から 品質、安全性を検査される。このプロフェッショナルなアプローチ、設備、プロセスは例年BRC認定によりAランクを受賞しています。Aランクはこの業界の食品安全基準では最高級のものと書いてある。

そこでBRCを調べてみると、英国小売業協会(British Retail Consortium)が発行している食品安全のための規格で、同協会が第三者認証のスキームを運用しており、GFSI (Global Food Safety Initiative)のベンチマーク規格として、HACCPとISO9001と共通するマネジメントシステムの要素を含み、食品の安全衛生管理、法律遵守、品質管理の3点に焦点をあてているもの。

この規格は、世界中で16ヶ国語に翻訳され、約14,150の事業所が認証を取得しており、日本でも3事業所が既に取得している(2011年現在)。英国だけではなく、他の欧州諸国の小売業者を始め、海外でもBRC規格取得を取引条件として求めていて、認証取得事業所はA~Dのランクに分けられ、厳格な審査の品質が認証機関、認証審査員に求められることから、欧米との取引では認証は評価されている。

という背景とAランクであるからルム・バン・イヤーセーケは自慢しているのである。

2.MSC認定

ルム・バン・イヤーセーケは海洋管理協議会(MSC Marine Stewardship Council)のチェーン オブ コストディー スタンダード認定書を保持している。MSCは科学者や漁業専門家によってつくられた、漁業の持続可能性に関する唯一の国際基準で、この基準は世界で一番厳重なもので、これによって漁業者が持続可能性をもった漁業を行うようになることを目的としている。

以上のように技術的特性を述べているほかに、中華わかめについてもかなり詳しく以下のようにPRしている。
「海には多くの宝物がありますが、中にはあまり知られていないものもあります。海藻は海のエコロジーにおいて重要な役割を果たすだけでなく、低カロリー、栄養価の高い食物の原型です。多くのビタミンとミネラルを含んでいます。アジアでは何百年も前にこれが発見されています。

中華わかめは新鮮な海藻を、胡麻油、胡麻、しょうゆ、少々の唐辛子等であえたものです。元々は寿司や刺身のサイドディッシュでした。生牡蠣の上にのせても美味しく、新鮮な甘みと、しょっぱさ、少々の辛さが美味しく、なかなかやめられません。

この風味は、焼いたサーモン、茹でた白身魚、焼いたムラサキ貝のような魚料理と一緒に添えると一層引き立ちます。他のわかめ商品のように水につけたり洗ったりする必要はなく、そのまま食べることができます。この人気商品を150グラムの冷蔵パッケージにて販売しています。海の野菜の消費量は明らかに上昇しています。現代の消費者はこの知られていなかった海の野菜に慣れ親しんできています。この美味しいシーフードを是非トライしてみてください。

おすすめメニューとしては『魚料理の野菜に代わるサイドディッシュとして』『タパスの魚料理として』『寿司の前菜として』『生牡蠣に添えて』」なかなか研究していると感じ、このような企業がオランダの海辺に存在していること、それがオランダだと改めて感じた。

オランダについては今後も研究テーマとして取り組んでいきたいと思っている。